お披露目会



名旅館&一流ホテル 優雅な一泊二日の旅』特派記者報告(2)


4.宿泊先「ての字屋」

■天下一の草津の湯で味わう幸福の時間
文・写真/北村真由美(教員)

久しぶりに母とふたりで旅に出た。行き先は草津温泉。目的地が近づくにつれ、期待に胸がはずむ。バスを降りると、歓迎の小雪が舞いはじめた。垂れ込めた雲の合間から薄日がさす中、凍えそうな冬木立を尻目に歩き出す。温泉地の中心に位 置する湯畑には、白い湯気が勢いよく立ちのぼっていた。なだらかな坂を下って角を曲がると、目ざす「ての字屋」が現れる。山の斜面 にそっと寄り添うような佇まい。灯火が薄闇を優しく照らし、夕刻をほのかに彩 っていた。

廊下に置かれた露地行灯や香炉に導かれ、部屋に歩を進めると、そこには幽玄の世界が広がっていた。前庭の雪景色、縁側の緋毛氈と円座、金色の風炉先屏風…など、鮮やかな趣が添えられ、この上なく贅沢な安らぎに包まれる瞬間だった。雪明かりに照らされつつ味わう夕食も格別 。懐石ならではのもてなしは、一品一品心づくしの御馳走ばかりだ。山の幸はもちろん、鯛の蕪蒸しや牡蠣の霙あんも、とりわけ冬にふさわしい。女将さんおすすめの地酒で雪見酒を酌み交わすと、幸福のときが訪れる。

この宿において、何にもまして尊く感じられたのは天然の岩風呂。千二百年の間、変わることなく湧き出ているという温泉はこんこんとあふれ、岩肌をつたって乳白色になり、総檜造りの巨大な浴槽へと注ぎこまれる。その様子は湯煙の向こうに朧に浮かび上がり、実にすがすがしい。大いなる自然の恵みそのものに触れていると同時に、厳かな儀式の場に臨んでいるようでもあり、まさに温泉の神様を祀った聖地というべく風情が醸し出される。静かに流れる至福の時間に、道中の疲れも年末の慌ただしさも忘れて、ゆっくり別 天地に遊び、心ゆくまでくつろぐことができた。

天下一の草津の湯。歴史ある温泉を守り続ける心意気は、宿全体に満ち満ちていた。名湯への慈しみ、旅人への細やかな気遣い、さらに思いがけない大雪の恩恵もあって、新鮮な驚きと喜びの連続で、なにもかもすべてが心地よく、じんわり温かな年忘れの旅となった。

写真
客室では、前庭の雪景色や金色の風炉先屏風を照らす灯にうっとり。



■お湯も料理ももてなしも、本物の贅沢がここにある

文・写真/吉原淳子(会社員)

囲炉裏や花などの季節感あふれるしつらいに、終始目を奪われながら部屋へと案内されると、そこには、行灯と金屏風、赤い絨毯が飾られ、平安絵巻のような世界が広がっていました。客室の庭坪にはたっぷりと雪が積もり、冬ならではの貴重な美しさと幻想的な世界を満喫できました。

草津温泉唯一の天然の岩風呂では、至福のひとときを堪能。「草津の湯はいい…」と、噂には聞いていたのですが、噂以上のすばらしさにびっくり。自然の岩肌から流れてきて、檜の風呂へと注がれるトロリとしたお湯に浸かっていると、本当に肌がツルツルになり、温泉でこんなにもなめらかな肌になるのを実感したのは初めてでした。

すべすべ肌になり、楽しみにしていた夕食の時間。次々と運ばれてくる京懐石のフルコースは、イチゴの食前酒に始まり、海の幸、山の幸と、どれも上品なお味で手間のかかったものばかり。温かいものは温かいうちに…と、いちばんおいしいタイミングで運ぶ心配りにも感動しました。

こんなにもいいお湯があり、おいしい料理があり、きめ細やかな心遣いがある。そして、訪れた者がゆったりと心穏やかに過ごすことができる、これこそ本物の贅沢に違いないと思わずにはいられませんでした。またいつの日か、自分のためにゆっくりとした至福の時間を過ごしたくなったら訪れようと、心に誓いました。

写真
囲炉裏や花、傘など、粋な演出が施されたロビーで。


5.宿泊先「上山田ホテル」

■家族旅行では味わえない、素敵な夫婦ふたり旅
文・写真/熊谷滋子(主婦)

今回の旅は、大学生と高校生になった娘たちを家に残しての、初めての夫婦ふたり旅。ホテルに着くなり、立派なお庭が私たちを出迎えてくれました。

ホテル内には、正面の壁のほか、至るところに『書』の作品があり、書の好きな私は廊下を歩きながら十分楽しませていただきました。温泉は、じっくりと浸かるのにちょうどいい温度で、外はとても寒かったのですが、体の芯から温まることができました。夕食は落ち着いた雰囲気のレストランで、おいしいワインを傾けながら、蕪やきのこなど地元で採れた食材をふんだんに使ったフランス料理に舌鼓。朝食は、部屋の温泉にゆっくりと浸かった後、部屋に運んでいただいた料理をおいしくいただきました。

この旅は、子供たちの意向を気にすることなく、宿でのひとときを楽しみ、信濃の土地をゆっくりと心ゆくまで堪能。家族旅行とはまたひと味違う素敵な旅となりました。

写真
隣接するレストランでは、土地の幸満載のフランス料理を。



■土地の恵みに触れる温もりの宿
文・写真/田中春江(主婦)

思わぬときの贈り物があり、遠い昔を思い起こしています。結婚間もないころ、夏の信州を訪れたことがありますが、年月を重ねた夫婦の旅に期待をふくらませ、長野新幹線「あさま」に乗り込みました。

千曲川沿いにある「上山田ホテル」へは、夕暮れ時に到着。残雪がより一層引き立てている庭を眺めながらロビーに入ると、まず目を奪われたのが、正面 の壁にあるわらで編まれた亀3匹。その下には、八手の葉に薄紫色の葉牡丹をのせ、睡蓮に見立てた粋な演出がほどこされています。

部屋に案内された後、早速、見晴らしのいい展望風呂へと向かいました。お湯は45度の源泉のみを使用しているため、効能が損なわれることはないとのこと。体の芯まで温まり、湯上がりのすべすべ肌に感動しました。また、深夜にも露天風呂へ。薄暗がりの湯気の向こうで流れる水の音に耳を澄ませ、物思いにふけながら、寒い時期だからこそ味わえる温泉の醍醐味を感じました。

夕食は、同じ敷地内にある「ラピス・ラズリ」というフレンチレストランへ。地元で採れたトマトやきのこ、菜の花などは美しく器に盛られ、華麗なフランス料理へと変身。鹿の肉は噛みしめる度に香ばしさが口に広がり、こだわりの手づくりパンも大変美味。フランスパン好きな私は3回もおかわりをしてしまいました。中でも、フォアグラのスープは絶品で、素材そのものの旨みがたっぷりと含まれた一品は、余韻が残る贅沢な味わいでした。

チェックアウト時は、女将、若女将ともに見送りに。上品さの中に粋きを感じる女将、そして素朴で飾らない若女将。人と人との出会いや温もりを大切にしていることが、自然とホテルの伝統となって受け継がれている気がしました。

写真
松の木と石灯籠が見事に調和した庭の前で。

写真
源泉のみを使用している展望温泉。


6.宿泊先「ホテルヨーロッパ」

■私的好みのホテルステイを満喫
写真・文・イラスト/石川真澄(看護士)

女ふたりで旅をするとき、ホテルには何を求めるだろうか? 「ホテルヨーロッパ」といえば、最高級の格を誇り、「ハウステンボス」の運河を引き込んだ内海の船着場から専用クルーザーで直接チェックインできるという、あこがれのリゾートホテルである。

そんなホテルが企画した女性限定の宿泊プラン…と聞けば、それだけで利用したくなってくる。今回、私たちが利用したプランでは、ルームサービスの朝食のほか、さらに用意された12種類の特典から3つのプランを選択できる。そこで私たちは、“ウォーターコートコンサート招待”“アンカーズラウンジケーキセット”“オリジナルフレグランスセット”をチョイスした。ケーキを食べながらおしゃべりに花を咲かせ、夜は弦楽器の生演奏に感動し、いただいたフレグランスは旅の思い出となった。特典の選択次第で、“それぞれのホテルヨーロッパ”を満喫できるというわけだ。その上、ハウステンボス1日パスポートやハウステンボス美術館入場券がセットになっているのだから、瞬く間にときは過ぎ、足は棒になるほど。そして、ホテルに戻ってもワクワクしどうしだった。

ホテル内では、高い天井や厳選されたヨーロッパ家具など、至るところに最高級の贅沢を感じた。しかし、それ以上に印象に残ったのはホテルスタッフの心遣いだった。どこからともなく花の香りが漂い、それはロビーに飾られた豪華な花だけでない。よく見ると、小さな花がなんともかわいらしく生けてあるのだ。また、ところどころにポプリが置かれ、エレベーターの中まで甘い香りがしていたのには驚いた。ホテルスタッフの対応もこの香りのようだった。さりげなく、細やかに、誠実に。温かな言葉がけ同様に、見えない部分の優しい心遣いに私はすっかり魅了された。女同士で“癒しの旅”に出かけるなら、ぜひ「ホテルヨーロッパ」をおすすめしたい…、そう思った。

写真
ホテルの優雅な佇まいや館内の花など、思い出をイラストに残して。




※レポートは、できるだけ原文のまま掲載いたしておりますが、文字数の関係上、多少、割愛または補足させていただきました。

写真
豪華なルームサービスの朝食。シャンパン付きもうれしい限り。












「樂」メイン



Copyright(C) Shogakukan Inc. 2001 Copyright(C) 小学館
All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
掲載の記事・写真・イラスト等のすべてのコンテンツの無断複写・転載を禁じます。