「金塚晴子さんと金沢“和菓子ざんまい”の旅」特派記者報告(1)
■大人の修学旅行
文・写真/松原美恵子(会社員)
“和菓子ざんまい”という名の旅でありながら、それだけにとどまらなかった今回の旅は、私にとって驚きと発見の連続でした。近頃の旅で感じていたことは、その土地の気候と風土がその地に住む人々の人柄を作っているということ。金沢という町や山中温泉においても、日本海に近い温暖な気候の中、美しい花が生けられ、「日本の色」であふれている町のなかには、落ち着きの中にも洗練された美しさや繊細さが感じられました。そして、それらがそのまま町に暮らしている人々の人柄になっているような…。
金沢の「壽屋」では、美味しいお料理を目と舌で感じながら、ご主人のお話にありました「加賀群青」という壁に塗られている色に惚れ込んでしまいました。山中温泉では、朝夕の鶴仙渓での散歩を楽しみつつ、詠んだこともないのに俳句が自然と頭にうかび、「なるほど、芭蕉が詠みたくなるのもわかるなぁ」とひとり思ってみたものでした。「かよう亭」では、落ち着いたたたずまいの中、そこで採れた山菜を盛り込んだ美味しいお料理と「福文」の和菓子をいただきました。「加賀の和菓子というものはひなびていながらも洗練されている」という、ご主人の福さんのお話に、土地によって違いはある程度あるかなと感じていた私も、和菓子のさらなる奥深さに感動しました。
それと同時に「和菓子は建築と似ている」とも思いました。建築を職としているわたしですが、設計していく上での過程、考え方など、つくっていく作業に何か近いものを感じました。その土地がどのような土地(気候・風土)で、どのような方が召し上がるのか、どのような場所でのお茶席なのか、色合い、名前、お客さまに喜んでもらうには、など…。帰りにお土産にいただいたお菓子も大切に持ち帰り、家についてからそっとあけてみました。その色の美しいこと! 切ってみてもまた美しい! 大切に家族でわけあって楽しみました。
この旅をとおして、金塚さんをはじめ、多くの方との出会いがありました。私が最年少の参加者となりましたが、皆さんが自分のことを語る姿や立ち振舞いには“凛”とした美しさがありました。私も10年後には人に語れるものを持っていられるのだろうか? そのためにはどんな生き方をしようか? とまだまだ模索中です。そして、日本人として自分の中に埋もれていた“和の心”がよみがえってきました。「わたしたち日本人の行きつくところはやはりここなのかな…」と。
こんな“大人の修学旅行”、たまには良いですね。帰りの小樽行きのフェリーの中には、旅の余韻にひたる自分がいました。
※レポートは、できるだけ原文のまま掲載いたしておりますが、文字数の関係上、多少、割愛または補足させていただきました。

「こおろぎ橋」にて。鶴仙渓には情緒あふれる橋がたくさんあります。
|

美しい自然を満喫したら、思わず一句詠みたくなる!?
|
|