【あらすじ】
伊勢の神官である御師の福岡貢(仁左衛門)は、かつての主筋にあたる今田万次郎(松江)のために、御家の重宝・名刀青江下坂を奪還します。これを一時も早く万次郎へ渡そうと廓の油屋を訪れ、今は料理人で元家来の喜助(梅玉
)に預けた貢は、意地悪な仲居の万野(中村福助)に罵倒され、恋仲の遊女お紺(時蔵)にまで、愛想づかしをされてしまいます。憤然と油屋を後にした貢でしたが、大事な青江下坂の鞘が異なることに気づき、油屋に戻ります。しかし万野は、頑として貢に刀を渡そうとしません。争ううちに万野を傷つけてしまった貢は、騒ぐ万野を斬殺し、その勢いで、目に入った者を次々と斬りつけてゆきます。賑やかな音頭に興じる人々をよそに、逃げまどう男女と、白絣を血で染めて追う殺人者。仁左衛門の貢は、お人好しの青年が狂気に取り憑かれて行く様子を如実に描く上方系。憎々しい万野に初挑戦する福助との共演にも注目です。