今月の担当者/大沢さつき(本誌編集部)
本誌8月号の『「平家」の幻影を追って』では、編集スタッフ二人(このコーナー『樂写館』でおなじみの渡辺倫明と私)がチームを組みました。
まずはロケハン(本格的な取材にでかける前に現地に出向き場所や取材内容をチェックしてくること。ロケーション・ハンティングの略)にと、香川県の北部、屋島には1泊2日で私が、そして徳島の秘境、祖谷には渡辺が1泊2日で出かけ、東京に戻ってから総合打ち合わせをしました。厳島に関しては充分な資料もあるので、取材をしながら進行という形です。
そして、いよいよ取材開始となります。今回体験原稿をお願いした、いとうせいこうさんがスケジュールの関係で後日再取材となり、まずは、ジムカーナーをこなす腕前の渡辺の運転で、平家の落人伝説が色濃く根づく祖谷へと向かいました。撮影隊は、写真家の鈴木理策さん、鈴木さんのアシスタント小林さん、渡辺、そして私の4人で3泊4日の旅です。途中、安徳天皇の遺体を焼いたといわれている神社では全員が「なんだか地場が悪いというか…」と、なにやら無気味な空気。小林さんはお寺で修業をした経験もあるので、お経をあげて欲しいと頼んだり…。思い出深い取材旅行となりました。
そして後日今度はここに、いとうせいこうさんをお連れして二人で1泊2日で訪れることとなりました。宿泊先は、「ホテル秘境の湯」。ひなびた温泉好きのいとうさんはこの名に大いに期待されていたようですが、行ってみると昨年オープンの新しいホテルで、ジャグジーなども揃ったどちらかというと、モダンなホテル。イメージとは違ったと、少しがっくり。
とはいえ、当日は11時半に高知空港に着き、そこから約2時間あまりをかけて、祖谷の秘境へ。村に5台しかないタクシーで、平家の落人が隠れ住む場所はさもあらんと思われる緑深き山また山の旅。詳細は、本誌でいとうさんがお書きになっていますが、祖谷の名家、阿佐家には瀬戸内寂聴さんをはじめ、いろいろな方が訪れたらしく、その名を芳名帳に残していました。もちろん、いとうさんが作家だと判明したら、おばあさんに記帳を依頼され、名前を書き込んだところ、名前だけではダメと言われ、「作家・いとうせいこう」と記名したそうです。
ということで、祖谷には渡辺が2回、私も2回と取材を重ねました。その後屋島を取材、厳島にはロケハンなしで取材をし、今回のページが完成しました。