撮影/西山奈々子 文/成川照美(贔屓の会担当)
今回の特派記者は、熟年カップルの伊藤公一さんと純子さん夫妻、岩手と東京に離れて暮らす高橋貴美子さんと泰葉さん母娘の4人。平成18年11月18日(土)~11月23日(木)にかけて旅をされました。この旅では、ベニスでの観光を楽しんだ後、そこから車で40分ほどの、ゆったりとした時間が流れるトレヴィーゾの街とその近郊のベネトン本社を訪問しました。
ベニスでは皆さん、自由行動をたっぷり活用して、それぞれの思い出をつくり、トレヴィーゾではその暮らしぶりにいろいろ感じるものがあったようです。またベネトン本社を訪問し、クリエイティブな人々や会社の姿勢の素晴らしさに感動。出会った人や街からたくさんの感動をもらったこの旅は、歴史ある国の大らかに時の流れを受け入れる生き方を感じる、素晴らしいものとなりました。
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特派記者レポート 伊藤純子
ベニスに夜遅めに到着し、水上タクシーでホテルへ出発した途端、窓の外に中世の都が浮かび上がりました。その幻想の世界に引き込まれるように、私たちの夢の旅は始まりました。
ベニスでは主人とどうしても行きたかった、映画「旅情」に登場した骨董屋のあったサン・バルナバ広場も訪ねました。トレヴィーゾの街では、街を流れる運河の洗い場で、その場所の19世紀ごろの写真を発見。その風景は驚くほど変わらず、よいものを大切にする人たちの強い意志を感じました。
ベネトンの本社も昔の貴族の館を修復し、今も仕事部屋として使っていて感動。安藤忠雄氏が設計したファブリカという未来を担う若者のための建物も自然との調和を考えたもの。時を超えて受け継がれて行くイタリアの大きな力を感じました。
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特派記者レポート 伊藤公一
ベニスでは、中世の人たちが歩いた石畳を何百年の月日を経て私たちが歩き、その石畳をまたわずかにすり減らしているということに感激し、しばし悠久の昔に思いをめぐらす。
アクア・アルタ(高潮現象)の影響で、滞在中も朝は水嵩が増え、サンマルコ広場や路地には水浸しになったとき用の足場が並んでいた。自然を受け入れ、その中で悠然と過ごす彼らの生活力。そして市場や町で出会う人たちの明るさから、人生を謳歌している様子が伝わった。この旅で食したジビエの鹿肉や鴨肉は、味も舌触りもしっとりとうまみが凝縮されていて、自信たっぷりに出てくる料理すべてに大満足。
トレヴィーゾで見かけた、老夫婦が寄り添って歩いている姿。私たちも、あの人たちように感動を共にしながら、長く歩いていきたいと思った。
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特派記者レポート 高橋泰葉
今回の旅で印象深かったのは、トレヴィーゾのかわいらしい街並みと訪ねて行ったベネトン本社です。城壁に囲まれた街はとても小さく、ほとんどが15~16世紀の建物とか。古いから壊すのではなく、中をリフォームして今もそこに人が住んでいるということに驚き、花や緑を飾り綺麗に暮らしていることに住む人の人柄を感じました。
ベネトン本社は、昔は貴族の別荘だった美しい建物。中にはパソコンに向かって仕事をするスタッフがいて、ファッションという時代の最先端をいく彼らと、その光景のギャップに驚くと共に、過去のよいものは今に活用していこうという発想に感心。こういう環境の中から、個性的でカラフルなファッションが生まれてくるのだと納得しました。この旅では、母とふたりでいる時間が本当に楽しく、心に残る旅でした。
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特派記者レポート 高橋貴美子
ベニスはまさに水の都でした。車が入れない分、排気ガスもクラクションの音もなく、自然の音だけが響く街。サンマルコ広場に立って海を臨むと、ベニスの商人たちが賑やかにこの広場を行き来したであろう時代の、人々のざわめきが聞こえてくるようでした。
ベネトン本社は、私のイメージする、いわゆる“仕事場”とは程遠い贅沢な環境。別棟のデザインや事務関係の現場も、自由な雰囲気で明るくゆとりあるスペースで、ここから全世界に向けて情報発信をしていると思うと心がときめきました。
トレヴィーゾでは、この時期にしか食せないラデイッキオがみずみずしく、少しだけ感じる苦味がとても美味で忘れられない味でした。日ごろ離れて暮らす娘との旅は、私に安心感を与えてくれ、娘が頼もしく思える旅でもありました。